文=日中経済協會調査部長 高見澤學
7月7、8日の二日間にわたり、ドイツ北部のハンブルグで主要20カ國?地域(G20)首脳會議が開催される。開催が近付くに従い、日本でも今次首脳會議のテーマについて、自由貿易の推進や地球溫暖化対策の國際的な枠組みである「パリ協定」が主な議題になるとの報道がなされている。とはいえ、それにしてもいま一つ盛り上がりに欠ける気がするのはなぜだろうか。
今年3月にドイツのバーデン?バーデンで開催されたG20財務大臣?中央銀行総裁會議では、世界経済安定と貿易?投資促進のための財政?金融政策に議論が集中した。當然と言えば當然なのだが、昨年からのブレグジットや米國トランプ政権の誕生等、アンチグローバリズムや保護貿易主義の臺頭によって明らかに先進諸國の足並みが亂れてきており、これまで以上に問題が複雑化している現実に対処しなければならない。
昨年9月に中國杭州で開催されたG20以降の世界情勢の流れをみれば、今回のG20首脳會議でも議論の中心は前述した日本の報道にあったようなテーマで、米國トランプ政権の政策転換に楔を打ち込むことになるものと推察される。こうしたテーマは一見すると経済問題のように思えるが、実際には多分に政治的な色彩が強く感じられるものであることも否定できない。今回G20の一連の會議がドイツで行われていることをよくよく考えてみれば、純粋な意味での経済問題に対する議論がなされてもよいのではないだろうか。日中両國に限らず、今世界全體が直面している大きな潮流として、グローバル化とともに「第四次産業革命」と言われる情報化社會への対応が求められている中で、主要國のリーダーが集まるG20の場で具體的な対応を議論する価値は十分にある。
そもそもドイツは第四次産業革命につながる「Industry 4.0」のコンセプトを、早くも2011年に提示した國である。インターネット等の通信ネットワークを活用して工場內外のモノやサービスとつなげて、新たな価値やビジネスモデルを創出するというものである。中國は、これにならい2015年に「中國製造2025」や「インターネット+」といった新たな戦略を発表し、中國を「製造大國」から「製造強國」へと進化させる具體的な方策を示した。これには、中國が世界第2位の経済大國になったにもかかわらず、中國の製造業のレベルが依然として先進諸國と比べ差がある現実を踏まえ、情報?通信技術(ICT)の発展によって、いろいろな可能性が広まっていることが時代背景にあるわけで、中國が目指す発展方式の転換や産業のレベルアップへの格好の好機として捉えることができるからだろう。