2010年「第13回各國(guó)大使館員日本語(yǔ)スピーチコンテスト」受賞作品　領(lǐng)事部　黃錦

私が日本を初めて訪(fǎng)れたのは、學(xué)生時(shí)代のことでした。空港に到著して、まず駆け込んだのはお手洗い。しかし、用を済ませて、水を流そうとしたとき、なんと目の前にはボタンが十個(gè)ぐらいあって、どれを押せばいいかと困ってしまいました。試しに一つを押したら、ザーと大きな音がしてびっくりしました。「やばい、何かを壊してしまった」と怖くて怖くて、どうすればいいかわからない時(shí)、幸いなことに、その音は止まってくれました。「音姫」、この単語(yǔ)は後で教わりましたが、その時(shí)の私はびくびくしてお手洗いから逃げ出すしかありませんでした。

去年、私は仕事で再び來(lái)日しました。ここ數(shù)年、中國(guó)でもトイレの整備が進(jìn)められ、社會(huì)人になった私も、もう音姫に驚かされることはありませんでした。しかし、お手洗いに入るたびに感心してしまいます。お年寄りには手すり、赤ちゃんにはベビーチェア、女性には化粧専用コーナー、子供には幼児用小便器と手洗器が用意してあります。若い母親にはオムツ交換臺(tái)と授乳室、忙しいオフィスレディには洋服やストッキングの著替えボードが設(shè)置。さらに、障害者の方には大型ブースやオストメイト対応のトイレが設(shè)けてあります。さまざまな人に配慮し、さまざまなニーズに目を向け、さまざまな工夫がされています。どんな小さなニーズにでも一つ一つ応えるからこそ、どんな人でも自由に使えるトイレができました。

しかし、最も私の心を動(dòng)かしたのは、設(shè)備ではなく、人間そのものです。「いつもきれいに使っていただいて、誠(chéng)にありがとうございます」。この暖かい一言を見(jiàn)て、亂暴に使う人はいないでしょう。「不審物、不審者を見(jiàn)かけたら、このボタンを押してください」。駅のお手洗いでは、頼もしい安心感が感じられます。急に具合が悪くなって、コンビニのトイレを借りると、「大丈夫ですか？顔色悪いですね」とお店の人から聲を掛けられます。劇場(chǎng)のお手洗いでは、「まもなく開(kāi)演しますので、席までご案內(nèi)いたします」と聞いて、ほっと安心しました。トイレットペーパーを次の人のために三角に折るのは、日本に來(lái)て初めて聞きました。洗面臺(tái)に落ちた髪の毛の掃除をしなかったため、母親に怒られたの光景も見(jiàn)たことがあります。多くの人が譲り合って使うトイレ、お客様に最善を盡くそうとするトイレ。何よりも感心したのは、他人への思いやりと行き屆いたサービス精神でした。

人は目を、淑女は手を、主婦ならその家の臺(tái)所を見(jiàn)て、國(guó)ならその公衆(zhòng)トイレを見(jiàn)てわかります。誰(shuí)の言葉なのか忘れましたが、私は大賛成です。プライベートなところでもありますし、公共場(chǎng)所でもあるトイレ。今やただの用を足すところではなく、リラックスの場(chǎng)所、くつろぎの場(chǎng)所、自己調(diào)整の場(chǎng)所ともなりました。

中國(guó)の古典にはこんな言葉があります。「一つの部屋も掃除できないのに、どうして國(guó)を掃除できようか」。トイレの個(gè)室はせいぜい1平方メートル。この1平方メートルに人それぞれのニーズに応え、多くの設(shè)備を設(shè)置して、この1平方メートルを多くの人が譲り合って使います。この1平方メートルにきれいな日本、便利な日本、繊細(xì)な日本、モダンな日本、洗練された日本が見(jiàn)られ、この1平方メートルから37萬(wàn)平方キロメートルの日本が見(jiàn)えます。

隣にある先進(jìn)國(guó)日本。毎年50萬(wàn)人近くの中國(guó)人観光客と、7萬(wàn)人にも上る在日留學(xué)生が訪(fǎng)れます。學(xué)ぶべきなのは省エネ技術(shù)と地震対策だけでいいでしょうか。買(mǎi)って帰るのは電気製品と化粧品だけでいいでしょうか。私はこの1平方メートルの日本をお土産話(huà)としてでもいいから、どうしても中國(guó)の人々に持って帰ってほしいのです。これこそ、私たちの學(xué)ぶべきものであり、これこそ、日本そのものです。

さて、ご來(lái)場(chǎng)の皆様、本日私は最後の発表者となりますが、この後の休憩時(shí)間、お手洗いに行く人も多いでしょう。そこで見(jiàn)せてくれるのは、どんな日本ですか？

駐日本中國(guó)大使館より　2010年9月20日