文=楊小洲
200余年もの歴史をもつ徳川(江戸)幕府は、忍耐と努力の賜物だったと言われる。臺灣?喜読文化社出版「徳川家康」の前文に作者?古木氏によるこのような言葉がある:「忍耐強い人は往々にして人から蔑まされることがある。目的のために耐える人は、往々にして本性を表せなくなってしまうからだ。徳川家康による大坂の陣は、忍耐強くチャンスを待ち続けた者が、ようやく表舞臺に躍り出た時のような新鮮なイメージを彷彿させる。
徳川家にまつわる話を読むのであれば、まず李長聲氏による徳川家および山岡荘八氏について書いたエッセイを読まなければならない。李長聲氏いわく:1960年代、日本史ブームが到來した。特に中小企業の社長がこぞってこの小説を読みあさった。徳川家康の予見力、決斷力、分析力、忍耐力など多くの能力が、前途多難なビジネスにおいて有意義に活用された。徳川家康の歴史上の人物イメージを、山岡荘八氏が小説の中で好きなように変えてしまったように、小説の中の徳川家康は、ビジネスマンのお手本として読み手に解釈され、小説の中の人物イメージが読者により再構築されてしまったのである。
作家が作り出す徳川家康は、歴史上の人物を原型としたに過ぎない。徳川家康にまつわる伝説的エピソードは山岡荘八氏が作品の中で作り上げたものである。また読者もこれら腳色された話を好む傾向がある。作家が作り上げた仮想の出來事が、読者の頭の中であたかも実際にあったことのようによみがえるのである。