◇「ローマの休日」を見て新聞記者志望◇
それ以來、文章を書くことがむしろ面白く感じた。新聞記者を志望するようになったのは、文章を書く面白さもあったが、高校時代に有馬稲子主演の映畫「危険旅行」を見てからだ。マスコミの才女役の有馬稲子が失蹤し、週刊誌の記者がスクープして一緒に旅行しているうちに戀仲になる、というストーリーである。記者は毎日會社に行かず、ぶらぶらしていていいなあ、と思った。
大學時代、「ローマの休日」の映畫を見たとき、記者志望は確定的となった。アン王女役のオードリー?ヘプバーンと新聞記者の甘く切ない夢物語。新聞記者になるとこんな素晴らしい女性にめぐり會えるのだ、と早合點する性格は今も変わらない。書くことが好きで苦にならないのだから、自分でもできるだろうと、才女や王女といかなくとも、素晴らしい女性との出會いを期待して新聞記者になった。現実の生活は映畫のストーリーのようにはいかない。出會って伴侶となった女性も有馬稲子やヘプバーンには及ばないごく一般的な女性だった。しかし、35年間の記者生活を終えたあと、「生まれ変わっても新聞記者になりたい」と思うほど、記者稼業が好きになっていた。小學校時代の日記の宿題が、自分の人生を決めたようなものだ。
こんな體験を、擔當している學生の「寫作」の授業で話をすると、作文が苦手だという學生もその気になって頑張ってくれるので嬉しくなる。嫌いでも苦手でも、毎日書き続ければ必ず上達するというのが、私の體験からの信條である。前期の9月から授業を始め、2週間に1回程度の割合で作文を書いていくと、翌年の5月ごろには、20人前後のほとんどの學生が、文章構成や表現、ものの見方などしっかりした文章を書くようになる。
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