東京は三回目の緊急事態宣言に入った。
ちょうど昨年の今頃、日本では初の緊急事態宣言が出されたが、人々は自発的にステイホームを行い、流行まん延はすみやかに抑制された。しかし新型コロナウイルスと「共存」し続けたこの一年で、人々は無力感を感じ始め、オリンピックを間近に控えた今も、ワクチン接種率は低いままだ。変異株の増殖は國民の不安を高め、増加する感染者は重癥化を恐れ、回復後の後遺癥に苦しむ感染者も増えている。
そんな中、日本在住の中國人中醫(中國醫學)鍼灸師が、鍼灸と漢方薬で新型コロナウイルス感染と重癥化を予防するノウハウを記した『コロナウイルスの感染や重癥化を未然に防ぐ!』という本を出版した。日本では中國の中醫學の調剤を元にした「漢方」が広く知られているが、中國の鍼灸はまだあまり知られていない。いずれにせよ、西洋醫學が絶対的主流である日本で、新型コロナウイルスと闘うために中醫を利用するという発想は、日本に新風をもたらした。人民中國東京支局は、本書の著者で、日本で日本人や在日華僑華人を対象に中薬と鍼灸の診療を行う賀偉さんに取材を行った。
精誠堂鍼灸治療院院長で『コロナウイルスの感染や重癥化を未然に防ぐ!』の著者、賀偉さん
「住みやすい場所」と名高い東京の世田谷區。にぎやかな商店街を抜け、曲がりくねった靜かな小道をしばらく行くと、賀さんの診療所である精誠堂が現れる。賀さんは世界と中國雙方の無形文化遺産継承者で中國醫學の名醫、賀普仁氏の息子だ。1989年に「中國の鍼灸を日本に広める」という大志を持って來日し、日本の鍼灸師の免許を取得したのち、この診療所を開設した。「精誠堂」の名前は、賀さんの座右の銘「大醫精誠」から取られたものだ。
「中醫と鍼灸は、本當に新型コロナウイルスに有効なのですか?」
記者は中國國內では中醫と中薬を用いた成功例が數多くあることを知っているし、新型コロナウイルスに有効と名高い連花清瘟も常備しているが、すでに1年以上流行が続いている日本で、中醫や漢方が有効という話を聞いたことがないため、あえてそんな疑問を投げかけてみた。すると賀さんは「うちに來る日本の患者さん全員が同じ質問をしますよ」と笑った。
賀さんは、日本の漢方薬は中醫薬の「傷寒雑病論」などの記述がある処方箋に由來していると語る。遣唐使が千年前に中醫學を日本にもたらしたのち、それが受け継がれて発展し、「漢方」となった。「しかし今の漢方は特定の癥例に対し固定の処方を用います。これは日本の醫療システムに組み入れられているからで、これにより、漢方処方と運用の改善が大きく制限されています」と、賀さんは日本の「漢方」の現狀を語る。
その一例はこうだ。ある日、30代の女性患者が、突然味覚がなくなったと來院した。病院を何軒も回ったが治らなかったという。新型コロナウイルスの後遺癥の一つに味覚障害が挙げられているのは承知の事実だろう。「味覚障害は難治性の癥例であり、治療は非常に困難です。さらにその助成は新型コロナウイルスに感染したとは話していなかったため、私もそれについて言及することはできませんでした。そこで鍼灸を試してみました」。患者にとって想定外だったのは、數回の治療で味覚が徐々に戻っていったことだろう。「まさか味覚が戻るとは思いませんでした。中醫って本當に不思議です」と大喜びだったという。